KMIの3Q決算が発表されました。
配当を4%引き上げ、年$2.1ドルとしました。
会計上のOperating Incomeは7割以上と大幅に減っていますが、固定資産等の減損を除けば▲17%の減少でした。
スポンサーリンク
当社のIRはかなりまじめで、透明性には気を配っていると思います。
オーナーのMr. Kinderはあのエンロンの元COOで、エンロン事件の数年前に退社して、当社を設立した人です。
「元」エンロンのレッテルを拭い去るためにも、透明性に気を配っているようです。
通常はキンダーさん(今は会長)、CEO、CFOの3人で決算カンファレンスを対応しているのですが、今回は各事業部門長クラスを全員待機させて、いかなる細かい質問にもすべて対応していました。
日本で言えば、常務クラスが自分の管轄事業の質問にダイレクトで答える感じです。
かつ、各アナリストが同じ質問を繰り返し聞いてきますが、メゲずに? 丁寧に対応していました(議事録を読んでいるこっちが「また同じ質問かよ」って思うぐらいだった)。
さて、WTIの原油価格が昨年比6割も下落する中では、健闘している決算だと思いました。
当社は年初に必ず、増配率や利益額の予算を公表していて、その予算比で業績の進捗を述べています。
天然ガスパイプライン、CO2(原油生産と考えていいと思う)、ターミナル(貯蔵タンク)、製品パイプライン(流体物を流すパイプ)、カナダ事業とセグメントが分かれていています。
天然ガスパイプラインは予算を+1%、CO2は同▲8%、ターミナルは同約▲14%、製品パイプラインはわずかに未達、カナダは▲17%程度でした。
ターミナルは意外や、石炭等のバルク貯蔵が減少したことが理由。カナダは米ドル高が理由。
天然ガスが50%以上を占めるので、底堅い業績と言えると思います。営業利益に減価償却やその他償却費を加えた償却前利益は前年とほぼ同じでした。
カンファレンスでは、中心となる天然ガス事業は①電力需要、②メキシコ輸出、③化学セクターでの需要増、④LNG輸出などがあり、引き続き有望事業であると強調していました。
電力に関しては、環境対策により石炭発電をガス発電にする動きが続いています。おかげでターミナル事業での石炭貯蔵の収入が減っていますけど。
メキシコ輸出は地の利が生きていると思います(当社の本社はヒューストン)。メキシコでは、これまでは国営石油会社が独占して石油・天然ガスの採掘・生産を行っていましたが、ここ数年技術的に行き詰っていて、生産量が下落しています。
一方、メキシコで工場を作ってアメリカに輸出する、というモノづくりモデルが加速化しつつあること(日本企業でも工場進出が多くなっていますね)、人口増加もあることからエネルギー需要が増大しています。
つまり、石油・天然ガスの需要がひっ迫しているのに、生産が減少しているのです。
したがってメキシコでは、石油ガスの生産を外資に開放する政策に転換して事態の打開を図ろうとしています。天然ガスに関して言えば、テキサスからパイプラインで輸入もしよう、というわけです。
化学セクターでの需要増はシェールガス由来のエタンを活用したエチレンの生産を行うための工場建設が今進んでいます。天然ガスの価格が安いので、石油から作るエチレンより価格的に優位に立てます(石油も安くなったけどまだ優位)。
LNGの輸出、というのは2017年ごろから本格化するはずです(最近、日経新聞さん他マスコミさんはほとんど話題にしませんけど)。
製品パイプラインでは、ガソリン、航空機燃料などを運んでいますが、これも価格が安くなって需要が増えています。
原油生産に関しては、2016年は63%の生産予定量を$72ドルで予約済み、17年は同58%を$73、18年は同45%を$75となっていて、原油価格の乱高下を最小限に食い止める策が打ってあります。
左からCEO、Mr.Kinder、CFO |
ただ、株価が大幅に下落してしまって、新株発行による資金調達が容易ではなくなってしまいます。既存株主への希薄化も想定以上になりかねません。
会社側はこれを考慮して、来年の半ばまで新株発行に依存しない資金調達で、設備投資資金を賄う、と発表しました。
しかし、その具体的な調達方法はSECにより規制されて言えない、と(しかし、最後にキンダー氏がequityと言っちゃいました。またMLPでも作るのかな?)。
また、格付けの維持は絶対守るとも言及し、資金調達が生命線であることが露呈しました。
これを聞いたアナリストたちは、かえって不安に思ったのではないでしょうか?(私も議事録を読んで少しその調達方法に関しては不安になりました)。
また、2016年の増配率を、従来10%としていたものを6%~10%とレンジを示しました。
これを業績下方修正と捉えられたようです。アナリスト的にはこれが一時的なのものなのか、継続的なものなのかわかりかねるようでした。
会社側は、今の株価でもパイプライン等の建設受注残をこなすには問題ないファイナンス状況だが、この株価の環境で行うのは既存株主にとって利益にならないと思うので、相場が落ち着くまで新株の発行を伴わない資金調達を考えている。
配当については、10%成長でやっていけるが、あまりにも環境が不安定なので、手元資金に余裕を持たせた状況にあったほうがいいと判断した、と釈明。
多分この辺のミスマッチが株価暴落に火をつけたのでしょうね。
個人的な感想
- 正直、会社の事業のファンダメンタルに関して言えば、IBMより自信があります。エネルギー需要の方が計算しやすいというのもありますし、当社が業界のトップですし。
- ただ、増配第一主義、というのが市場であまり受け入れられないようなきらいがあります。利上げ局面にある中で、借入金の水準が高いこともその理由のようです(2005~2007年はうまく乗り切っているんですけどね)。
- 会社側は常に市場と向き合って、対策を練ってきましたが、増配率を落として、借入金水準を落とすような方向でも十分投資家はついてくるような気はしますけどね。
- 配当利回り6%で、増配率5%でも十分じゃないかな? 残りのキャッシュは借入金の返済や設備投資資金に振り分けるでもいいような気がしました。
- 何かきっかけがあれば株価は反騰するでしょうが、今はまだまだきっかけがつかめそうにないですね。
- 会社側はまた何か対策を打つと思います。
- 天然ガス、石油というエネルギーはずっと存在しますし、その際当社の施設は社会インフラなので、業績が大幅に悪化する、とか破たんする、というのはよほど大事故でも起こさない限り、想定できません。コモディティゆえに存在し続けると。
- 資金調達方法に関しては将来変わる可能性もあり得る(自己資金で調達、つまり配当に回す金が減る)。ただ、まだまだ成長できる事業だと思います。
- あまりに1銘柄に偏重しすぎるのは、今回の件で懲りたので、よほどでないと追加投資もしないが、この価格なら、おいしい投資のように、個人的には思います。
0 件のコメント:
コメントを投稿