私の古いポートフォリオ銘柄(初めて買って今年で7年目)であるDow Chemical(Dow)の第三四半期決算が発表されました。
かなり良かったようです。10%の増配が発表されました。私にとっても計算外の増配でPMの低調だった増配をカバーしてくれそうです。
Dowには、日本ではソニーやファナックにも出資した、あのダニエル・ローブ率いるサード・ポイントが大株主として存在しています。
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2014年の11月ごろ、サード・ポイントが取締役2名の派遣を要求していて、Dow側はこれを受け入れました(もっとも、Dow側も2名追加して、合計4名取締役を増やしたのですが)。
これは2013年後半に、リストラを加速する、とDowが言ったことに対し、「スピードが遅い」というものでした。
元々、Dowは総合石油化学会社として世界2位(だったと思う。1位は独DASF)の規模でしたが、コモディティであるが所以、業績も変動が激しく投資家からも投機的な扱いをされていました。また、中国などの新興国の成長もあって、いずれ斜陽化するだろう、と言われていました。
そこで、総合石油化学からスペシャリティーケミカルにシフトチェンジをすることを戦略に掲げて、現CEOが2006年ごろ就任したと記憶しています。
2008年に、ローム&ハースという電子部品・半導体系に強いライバルを買収して、コモディティな基礎化学を分離する、という手法をリーマンショックのさなかに断行しました。
(この時も、アクティビストに噛み付かれたのですけど)。
その後、業績も立ち直ったこととシェール革命もあり、安い原材料を享受できる(天然ガス由来のエタンを活用してエチレンを生産。そのエチレンで高付加価値品を製造)ことなどにより、さらに今後も業績は改善できる可能性があります。
ただ、原油価格の下落と共に販売単価の下落にも見舞われ、業績も思ったように上がらなくなったので、リストラを加速化する、という流れになっていると思います。
サード・ポイントが入ってきてからは、印象ですが、大胆な構造改革を行っていると思います。
塩素事業を売却し、さらに今後は時価総額に換算すると25%分の事業売却を行う可能性があります。
アグロサイエンス事業という、モンサントと同じような(規模は小さいですが)穀物や綿花の遺伝子組み換え種子等を開発製造する事業部門があります。これを売却する可能性を匂わせました。
農業科学の研究開発費が多額であり、今後の競争についていけるかわからない、というようなコメントのようです。ということは、独立企業で存続するより、モンサントのような同業他社とくっつく、と考えやすいですね。
また、クゥエートとの合弁で行っている基礎科学分野の持ち分もクゥエート側に売却すること発表しました。
一方、米国のメキシコ湾岸で、シェールガスを活用した巨大エチレンプラントの建設とサウジアラビアのサウジアラムコ社と合弁でコンビナート会社の設立運営がいよいよスタートします。
エチレンプラントは、コモディティじゃないか? と思うのですが、このエチレンを使って、高付加価値な下流製品を作るようです。EUや中国の自社工場にも供給し、コスト競争力を高めることが狙いの模様です。
サウジアラムコとの合弁については、これもコモディティじゃないの? と思ったのですが、相手がアラムコ社(世界最大の石油生産会社。サウジ石油政策の要となる会社。エクソンは世界最大の株式公開している石油会社)なので、絡んで損はないという考えと、合弁会社が作る石油製品を輸入できる権利があるはずなので、低コストで原材料の仕入れが可能ということのようだ。
(サウジは1バレル数ドル程度の石油掘削コストですから)
ただし、エチレンプラントとサウジアラムコ社との合弁はかなり以前から経営計画に組み込まれていました。したがって、クウエート合弁会社とアグロサイエンス事業の売却代金はほとんどが株主還元に向かうようです。
現在、10%の増配と、50億ドル(約6000億円)の自社株買いが発表されています。
自社株買いに至っては、50億ドルの枠がすべて消化された場合、2013年以降の自社株買いの累積額は95億ドル(1.1兆円)にも上ります(Dowの時価総額は583億ドル)。
アグロサイエンス事業の売却が本当に株主のためになるのか(リーマンショック直後は結構業績を下支えしてくれた記憶がある)、よくわかりませんが、ダニエル・ローブ/サード・ポイント効果が出ているような気がします。
日本じゃ、某斜陽電機メーカーさんの会計情報を「チラ見」させる程度で騒いでいましたが、株主本位経営とはこんな感じでしょうか?
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