ECOLAB社は23年連続増配なのですが、なぜか配当貴族銘柄指定されています。理由はよくわかりませんが、業容などを考えてみれば、それに十分値すると思いますので、気にせず分析してみました。
上記はECL社が昨年12月に増配を決めた時のプレスリリースです。そこには23rd consecutive annual dividend rate increase と記載されています。参考にしているU.S Dividend Championsのデータにも23年となっていました。
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さて、エコラボ社は何をやっている会社なのか? やや説明に苦労します。
元々ホテルの自動皿洗い器がなかなかうまく活用されないのを見て、その理由が、よい洗剤がないからだと見た創業者が、自動皿洗い器用の洗剤を開発したのがきっかけのようです。
その後、製造現場の機器の洗浄、消毒などの水回り系の製品を開発したり、食料品の殺菌・消毒など、あるいは機械そのものを作り、洗剤とセットで販売したり、そういった事業のアウトソーシングを行ったりなど事業領域を拡大していきました。
食品飲料、紙パルプ、繊維、公共施設、病院、外食など様々な業界のバリューチェーンで発生する水処理系の衛生・消毒分野の製品で成長した会社です。製造とサービスの双方を行っているようですが、どちらかといえば、洗浄・消毒を行うサービス業というのが元々の立ち位置のようです。
この業界は、巨大企業が存在しないフラグメンタルな業界だそうで、当社は$60B(約7.2兆円)市場の10%を占めるにすぎません。
しかしながら、2番手事業者は当社の半分程度の規模しかないため、当社は自分より小規模の事業者のシェアを食って成長できるそうです。
2011年から2014年にかけて売上高が2倍以上になっています。利益も倍以上になっています。
これはM&Aによるものです。2011年にNalco(売上高約$4.5B)、2012年にChampion Technology(同$1.4B)を相次いで買収したようです。
特にNalcoは、石油・天然ガス事業者のサービス回りの化学品を提供する会社(さび止剤、添加物、微生物を取り除く薬、またはそれらの器具の洗浄剤など)で、事業領域が一気に拡大しています。
これらの買収は主に借入金で行っている模様です。Net Debt(純有利子負債)は一気に10倍となり、Net Debt/EBITDAは一時3倍以上になりました。ROEも低下していますね。
FCFも倍増していますが、こちらはおそらく借入金の返済にも充てられるのではないでしょうか? 発行済み株式総数も2012年ごろに増資している模様で、そこから減っていません(自社株買いの余裕がない)。
借入金でM&Aをすれば、当然EPSは上がるため、株価もいい感じで上昇したようです。
結局、株価は正直で、5年で売上高・利益同様に2倍以上になっていますので(約$50→約$120)、買収は成功だったということでしょうか。
2014年ごろから株価は伸び悩んでいますが、当社の事業でNalco事業が石油・天然ガス向けサービス系の事業であることを考えると、現在の業績や株価は健闘しているような気がします。
(石油メジャーはサービス会社に平均で30%のコストカットを要求するといっていますので)
当社の事業領域は大きく、Global Industrial、Global Institutional, Global Energyの3つのセグメントに分かれます
合計で$14B(約1.7兆円)の売上高で、おおむね1/3ずつ、といってもよいと思います。
当社も北米以外の事業がざっくり半分で、事業はグローバル化しています。日本にも拠点はありますが、そんなに大きくないと思います(従業員400名程度)。日本の他社と合弁で事業を行っている模様です。
MorningStar社では、当社のrazor-and-bladeモデル(カミソリとカミソリの刃;カミソリを買ったらその刃も買うのと同様にエコラボの製品を買えば、そのサービスも買うような仕組みを作る。たぶんキヤノンの複写機とトナーのビジネスと同じようなものだと思う)を評価しており、Economic MoatはNarrowをつけています。
また、売上高は今後5年程度はMid-Single-Digit(4~6%台だと思う)で成長でき、欧州でリストラが期待できるため、利益率の改善も見込まれる、と言っており、比較的好意的な評価と感じました。
一方、Nalco社の買収のあとに原油価格の暴落にも見舞われており、売上高の3割を占めるGlobal Energy事業やコモディティなコストも多くなっており、従来と比較して、シクリカルな収益構造になっている可能性がある点を留意点と言っています。
感想
- 当社の株式市場におけるセクター区分は素材でスペシャリティ・ケミカルということになっています。しかし、業績・株価とも非常に安定した動きになっています。
- これは、スペシャリティ・ケミカル(付加価値の高い製品を作る化学会社)に移行したいと思っても、コモディティな石油化学会社だと考えられているダウ・ケミカルの株主として見た場合、うらやましいです。
- 連続増配もやっていますし、次の景気の谷で、うまくいけばダウ・ケミカルから当社に乗り換えたいな、と思ったぐらいです。
- 建築塗料のシャーマン・ウイリアムスと言い、エコラボ社と言い、化学品会社でありながら業績が安定的で連続増配がある、というのはアメリカ株式市場の奥行きの深さを感じました。
エコラボ社はこれでおしまい。
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