楽天セミナーでは、おそらく今回初登場だと思います。31歳の新進気鋭の若手中国専門家、という感じでした。
高卒後に北京大学に留学し(2002年~2003年ごろ)、同大学院で研究を重ね、アメリカのジョンズホプキンス大で中国の専門家としてまた研究を重ねて、日本に帰国という珍しいキャリアの持ち主。
話を聞けば分かりますが、頭の切れる人です。また、日本人らしい、礼節や謙虚さを兼ね備えているので、我々おじさんのウケは良いと思います。ただし、それは決して計算されたものではなく、彼の性格だと思います。
話の内容は、①中国共産党は何を重視して中国を統治しているのかという点と、②その観点から今後の中国はどうなっていくのかと推測されるのかという点、③最後は我々が株屋さんだからでしょうが、中国では今後どんな産業で成長が期待できそうか、といったものでした。
経歴からお分かりの通り、彼の「青春時代」は中国の隆盛期と重なっていますので、ちょっと「中国びいき」(彼自身は冷静かつ客観的に中国を分析していますが)が入っている点に留意を。
中国共産党を分析するフレームワーク
彼は中国共産党が何を軸にして、国内統治を目指しているのか? という点で独自のフレームワークを作ったそうです。
中国は選挙で選ばれた人が政治を行っているわけではありません。したがって、国民に共産党が支持されるためには、それは政治で結果を残すことでしかない、と思っているらしいです(注:選挙で選ばれても日本の民主党の様に結果がダメなら、ドヒンシュクですが)。
その、共産党統治のフレームワークは以下の4つの軸から成り立っているとのこと。
- 社会の安定
- 経済の成長
- 社会の公正さ
- 人権(個人的には大いに意外)
鄧小平以来、社会の安定と経済の成長は目覚ましいものがありました(経済が成長していたから社会が安定していたといえなくもないが)。
習近平さんになってからは、格差の是正や環境問題に取り組むことが主眼となっています(末端まで行き届いているかは別として)。
経済成長率を犠牲にしても、構造改革を行い、公平な社会を目指しているそうです(汚職撲滅運動はその一環だそうです)。
なぜなら、経済の成長や社会の安定はすでにこれまでの政権で実現しており、自分たちが国民に「実績」を残すとすれば、何か?を問い続けているはずだ、と指摘していました。
経済の2ケタ成長は無理で、6~7%でセーブしてでもそれを優先するそうです。
株式市場への介入は結局、共産党の護身術
ただし、昨今の中国株式市場の暴落に政府が介入した背景を加藤氏は以下の様に分析していました。
元々共産党は貧しい労働者や農民を味方につけて、そこそこ金持ちだった国民党と闘った歴史から、低中所得者にやさしい政策を志向しなければならない、と考えているそうです。
一方、昨今株に投資した大半は、いわゆる個人投資家層のようで、かつ、中間層(年収200万円~400万程度:人口の3割・4億人前後)の人たちが多いようです。
この層は、中国の将来に不安を抱いていて(社会保障制度不備・高齢化・中国の競争力低下など)、蓄財などに励んでいるそうです。
そしてためたお金(プラス結構な額の借金を背負って)で株に投資しているので、暴落するとたまったものではないそうです。
暴落して、たとえば将来が真っ暗にでもなった場合、中国では人民は暴徒化してしまうリスクが高く、強いては共産党の存在基盤を脅かす存在になりかねない、と分析していました。
人民は政府が「人民のために何をしてくれるのか」を受け身で期待するしかなく(民主主義ではないから)、期待を裏切ると、ざっくり言えば、暴れる、という感じの様です(ちょっと簡単に書きすぎましたが)。
最後は政府が何とかしてくれるだろう、という考えが根底にあるようです。
したがって、株式市場に介入してまで、それを食い止める、というのは共産党に課された使命の様に共産党は感じたのでしょうかね(私見)。
(以下私見です。日本人的観点でいえば、借金で株を買って、失敗したら政府が救ってくれるって、甘やかしすぎのような気もしますけど)
結局、共産党の支配基盤を守るために(社会の安定を守るために)株式市場に介入した、という解説でした(と個人的に理解)。
うーん、「人民」は不動産市場も最後は共産党が何とかしてくれる、と考えちゃうだろうなあ。投資自己責任(共産党も投資を煽ったかもしれないが)の原則は彼の国では、芽生えないのかなあ。
やはりインターネットとサイエンス 起業しろ
中国での今後の有望分野としては、とにかく政府は若い人に起業しろ、イノベーションを起こせ、とハッパをかけているそうです。
- インターネット(バイドゥ、アリババにつづけという感じ)
- 環境・科学技術(北京大、精華大のキャンパス内にテクノロジーパークが設置されていて、やる気があれば起業がすぐにでもできるような感じだそうです)
- 国有企業(なんだかんだ言っても、政府の息がかかっているから)
中国の上級階級は、放っておいてもどんどん外国に移民してしまうので、政府としては先ほどの中間層が起業して、中国の社会経済をより質の高いものに発展させてくれることを意図しているようです(この辺は労働者階級中心のイデオロギーが残っていそうですね。そう考えると金持ちが、最後は資産を没収されるかもしれない、と考えるのは理にかなっている)。
経済成長率が低下して、従来の企業の雇用力が低下しているので、起業で成功した企業から雇用を創造してもらう意図もあるようです(一応理にかなっている)。
加藤氏が出会った中国人はそうした政府の期待に応えようとする、一昔前の日本でいえば、青雲の志的なハングリー精神旺盛な人が多かったようなので、彼は中国の将来性は十分有望だ、と分析していました(まあ優秀な人の周りには優秀な人が集まってくるのでしょう)。
個人的には、中国株を直接買うことはないと思いますが、恩恵を受ける日米の企業の株を買う、という従来路線を再確認しました。
尚、著書の宣伝をしていたので、早速買って読んでみようと思っています。また読書感想文をアップすると思います。
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